傷口を広げる対処法

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人は当事者で居るよりも一歩引いて俯瞰して状況を観察した方が全体感を見ることが出来るので、エンジニア組織とは別に例を挙げて物語形式で書いてみます。

※この物語はフィクションです

様々な要素(組織や職業、人物など)を置き換えてみてください。

序章

Aさんはとある会社で働く営業マン、社会人になって15年が経ちました。彼の仕事は、お堅い会社の役員を相手に営業を行います。優秀だった同期のBさん、Cさんは一身上の都合により会社を去ってしまい、優秀な同期を失ったAさんはテンションが下がりながらも、これまで通り自分の仕事を続けています。

この会社は新卒採用は行っておらず、営業マンは中途採用のみです。昨年は退職したBさん、Cさんの代わりにDさん、Eさんの2人が新たに入社しましたが、BさんCさんほどの実力は備えておらず、重要顧客との相手はAさんが殆ど対応している状況です。
Dさん、Eさん両名の待遇はAさんと同じですが、彼らの営業スキルは会社の平均水準には達してはいません。何かしら別の理由で採用に至ったようですが、Aさんはそれを知りません。

[営業1課]
Hさん -> 営業1課の課長
Aさん -> 優秀な人材(在籍中)
Bさん -> Aさんの同期で優秀な人材(退職済)
Cさん -> Aさんの同期で優秀な人材(退職済)
Dさん -> 中途採用/実力は平均以下
Eさん -> 中途採用/実力は平均以下

第2章

半年ほど経ったところでAさんにも心境の変化が出てました。そろそろ自分も同期と同じ道を選択しようと考えたのです。その理由は、社内の環境が大きく変わってしまったことです。彼が入社した当時はBさん/Cさんといった優秀な同期と共に仕事をすることが出来ましたが、最近はそれが叶わなくなっている事が大きな原因のようです。

彼と同じ組織の営業マンである、Dさん、Eさんの普段の仕事を見てみましょう。A/D/Eさんの上司であるHさんも登場させてみます。

  • 9時AM チームの朝礼にて(参加者はH,A/D/E)
    • Hさん「今日はこれから重要な案件でAさんとN食品に行ってきます。16時頃に戻ってきますが、何かあったらきちんと私にメールかLINEで連絡を入れてください。」
  • 11時AM
    • PRRRR(お客様からの電話が鳴る音)
    • Dさん『はいもしもし? え?Hさんですか。今居ないっすね』
    • Dさん『じゃぁAさん? Aさんも居ないっす』
    • Dさん『え?緊急の用事っすか? でも今居ないのでどうしようもないっすね』
    • Eさん「緊急なら俺が対応するっすよー」
    • Eさん『お電話変わりました、M商事さんですね。なるほどー、提案書の内容の一部を変更して欲しいという事ですね。』
    • Eさん (まぁたいした変更でもないだろうし、重要そうなお客さんっぽいから今返事しておくか)
    • Eさん『かしこまりました、ではそのように変更して進めさせていただきますね。それでは失礼します』
    • Eさん (ついでに提案書を直しておいたぞ)
  • 16時AM
    • Hさん「ただいま戻りました。私が居ない間に何かありましたか?」
    • Dさん「いつも通りっすー」
    • Eさん「特に問題はありませんでした」

翌日

  • 9時AM チームの朝会にて
    • Aさん「今日は11時にN食品、15時にM商事さんに打ち合わせに行ってきます」
  • 9時10分AM
    • Aさん(提案書を印刷して持っていかないとな。あれ? ファイルの更新日が新しくなっているぞ?)
    • Aさん(提案書が書き換わっているし、しかも変更内容が法律で禁止されている事案じゃないか)
    • Aさん「誰かM商事向けの提案書を更新しましたか?」
    • Eさん「あ、昨日M商事から電話があって直して欲しいって言われたので直しておきました」
    • Hさん「昨日何も無いって言ったじゃないか」
    • Eさん「特にトラブルはありませんでしたよ。重要顧客っぽいのでその場で対応しましたし、提案書もきちんと更新していますよ。変更はたいしたものじゃなさそうでしたので」
    • Hさん「そういうの、ちゃんと相談や報告をして欲しいな..」
    • Hさん「M商事には私から謝罪しておくから、Aさんは提案書を直してものでM商事の打ち合わせに行ってくれるかね」
    • Aさん「これからN食品に行かないといけないので、修正する時間あるかな… 移動中に修正します」

第3章

そんな日が続き、HさんもAさんも重要顧客への対応がパツパツになって行き、特にAさんは2章のような日常に疲弊しているようです。それを見かねた営業2課のGさんは、「HさんもAさんも重要顧客への対応がパツパツで疲れているじゃないか。このままではいけない。」

『重要顧客への対応は通常の顧客とは異なり、打ち合わせの準備や接待なども大変なので、もっと負荷分散してみんなで行うべきだ。AさんもHさんも最近仕事に疲れているじゃないか。Dさん、Eさんも加わって頑張りましょう』

Dさん「重要顧客?まぁ敬語?使えるから問題ねっす。接待もまぁ出来るっしょー」

Eさん「そのとおりです、重要顧客への営業に行って沢山契約してきますね!!」

終章

後は何が起きるか、結末は自分で想像してみてください。

あとがき

営業部長「大変そうだから、人を採用したよ。紹介するぞ。Jくんだ。彼は営業経験は殆どないが、素晴らしい志を持っている。Aさん、彼に営業のイロハを教えてあげてくれ。Jくん、挨拶よろしく。」

Jさん「ちょりっす」

営業部長「あれ、Aさんは今日は体調不良で休みか。弛んでるな。」

クリティカルシンキング

表面的な事象を根本原因として捉えてしまう例を挙げてみました。根本原因を考察して問題解決を図る方法に、クリティカルシンキングという分野があります。批判的思考と訳される事が多いですが完全に誤訳だと思います。次の本は私が10年以上前に読んだ本(私が読んだのは第1版)ですが、思考法の1つを学ぶのにとても良い本だと思います。